退院後まで見据えたケアで地域医療を支える「キラメキテラスへルスケアホスピタル」

2021年(令和3年)、「鹿児島市交通局跡地」で開発が進む「キラメキテラス」に移転し、回復期・慢性期病院としてすでに機能する「玉昌会 キラメキテラスへルスケアホスピタル」。今回は、入院から退院後の暮らしまで見据えた細やかなケアで、地域医療を支える同医院の髙田理事長に病院の歴史や理念、そして今後の展望などについてお話を伺った。

「キラメキテラスへルスケアホスピタル」
「キラメキテラスへルスケアホスピタル」

地域創生を目指す、回復期・慢性期病院

――キラメキテラスへルスケアホスピタルの成り立ちを教えてください。

髙田理事長: 当院は、1957年(昭和32年)1月に鹿児島市堀江町で開設された「高田医院」が始まりです。その後、1962年(昭和37年)8月に「医療法人 玉昌会」として設立の許可を受け、1985年(昭和60年)10月に「高田病院」に改称し、その時々で規模を拡大させながら、地域の回復期・慢性期病院として鹿児島市の医療・福祉に貢献してきました。

そして、この度は鹿児島市高麗町の「鹿児島市交通局跡地」で整備が進められる複合施設「キラメキテラス」に参画し、創業60周年記念事業として2021年(令和3年)2月に「キラメキテラスヘルスケアホスピタル」に改称、新築・移転する運びとなりました。

――現在の診療科目、病床数についても教えてください。

髙田理事長: 診療科目としては内科、腎臓内科(人工透析)、肝臓内科、消化器内科、循環器内科、脳神経内科、皮膚科、泌尿器科、リハビリテーション科、整形外科の10科目です。病床数としては地域一般病棟入院料1が17床、地域包括ケア入院医療管理料1が37床、回復期リハビリテーション病棟入院料1が35床、療養病棟入院基本料1が109床で計198床をご用意し、未病・予防部門の巡回健診のトータルウェルネスセンターがあります。

外観(東面・歩行者専用テラスより)
外観(東面・歩行者専用テラスより)

――この度は、なぜキラメキテラスに移転を決められたのでしょうか。

髙田理事長: 当院は地方創生、日本医師会が提唱する街づくりへの協力を前提に病院運営をしてきました。それは、少子高齢化にともない日本の、そして鹿児島の人口が急速に減少するだろう、と言われるなかで、人が住まなくなった街では病院もまたその存在意義を失うためです。

そこで、10年前から鹿児島のベッドタウン・姶良市に病院のほか介護、予防、教育、住まい、交流スペースなどの都市機能を一体的に整備し、一般の方から障害をもつ方まで皆がともに暮らせる街「JOYタウン構想」を検討し、実現に向けて当院主導で進めていました。そんな折、鹿児島市でも地元の総合商社「南国殖産株式会社」が中心となりコンパクトシティ「キラメキテラス」構想が立ち上がり、当院にもお声がけをいただき、それが私たちの理想と近しいものでしたので参画することとしたのです。

再入院を、極力させないための入院治療

――コンセプトに込められた想いをお聞かせください。

髙田理事長: 当院では「100日を通して、やさしく包まれる病院」をコンセプトに掲げています。これは「再入院を極力させない為の入院治療」という方針のもと、入院中の治療から在宅での介護サービスまでシームレスに提供できる回復期・慢性期病院としての機能を活かし、患者さまが一日でも早く自立し、日常生活に戻れるようにと入院期を50~100日程度に定め、その期間を有意義に、そして快適に過ごしていただくことを目標とするものです。

――とくに注力されている活動について教えてください。

非常時も稼働できる「透析室」
非常時も稼働できる「透析室」

髙田理事長: 当院の治療の特色は透析治療とリハビリテーション治療です。中でも、透析治療を担当する萩原院長は鹿児島県透析医会会長と同会災害対策委員長を兼務しております。院内には1度に33名が透析を受けられる設備があり、キラメキテラスには総合エネルギーセンターがあり想定される災害時でも電気とお湯の供給が可能で、更に院内には非常用に井戸水も備えていますので、断水や災害などのいかなる状況下でも安定した透析医療を含め医療介護サービスの提供が可能です。

「リハビリ室(機能訓練室)」
「リハビリ室(機能訓練室)」

髙田理事長: リハビリテーション機能は、回復期リハビリ病棟の施設基準はランク(Ⅰ)です。また、いまきいれ総合病院の70名のリハビリセラピストや鹿児島大学病院とも提携し、リハビリ専門医とリハビリセラピスト約80名らが日々研鑽を重ねています。さらに、系列の「加治木温泉病院」がもつ実績、知見をもとに、当院でも未熟児を含めた小児リハビリに力を入れているところです。

――そのほか特徴的な設備や機能などはございますか。

自然光あふれる「縁側廊下」
自然光あふれる「縁側廊下」

髙田理事長: 当院の特徴は1つの病棟にリハビリ室、浴室、食堂などが1カ所にあり、すべて横移動で完結できる構造となっており、3密を避けるための設備で言うと「縁側廊下」と「ゼロ動線病棟」があります。「縁側廊下」とは従来の病棟の廊下よりも広く、そして窓を大きく設計したものです。自然光あふれる空間はまるで自宅の縁側にいるかのようで、長期の入院生活において患者さんがご家族とゆったり過ごせる「ふれあいの場」と考えています。更にスマート病室を設け快適な入院生活が送れる環境を提供しています。

病室を隣接する「ゼロ動線病棟」
病室を隣接する「ゼロ動線病棟」

髙田理事長: 「ゼロ動線病棟」とは病棟の中央の通路部全体を、スタッフステーションにしたものです。病室のドア(患者さんが出入りするドアとは別)のすぐ向こう側に医療・介護スタッフがいるため、より患者さんに寄り添った「看守り」ができます。なお、これらの設計は「未来の新しい病棟」の概念として、特許庁から日本で最初に意匠登録がなされました。

「ゼロ動線病棟平面図」 ※画像提供:「玉昌会 キラメキテラスへルスケアホスピタル」
「ゼロ動線病棟平面図」 ※画像提供:「玉昌会 キラメキテラスへルスケアホスピタル」

――お隣の「いまきいれ総合病院」と繋がっていると伺いましたが。

隣接病院と繋がる連絡通路
隣接病院と繋がる連絡通路

髙田理事長: 「いまきいれ総合病院」と当院は、2階で渡り廊下の屋内空間アトリウムで繋がっており、スタッフも、患者さんも自由に行き来できます。異なる2つの医療法人が異なる医療機能の急性期機能の「いまきいれ総合病院」と、回復期・慢性期機能の当院と同時移転しての連携は全国に例がありません。急性期機能から慢性期機能、そして在宅医療や介護サービス、さらには予防医学までシームレスで提供できるこの新たな試みで、鹿児島の地域医療に大きく貢献したいと考えます。

2階・エントランスホール
2階・エントランスホール

一人ひとりに最適化された医療・介護を

――今回の新たな街づくりにおける役割も教えてください。

髙田理事長: 今、日本の医療はこれまでの「治す医療」から、「治し、支える医療」へと概念が大きく変わりました。「治す医療」とは生産年齢人口を早期に完治させ、社会に復帰させることに目的をおいた高度成長時代の医療です。一方、「治し支える医療」とは病気になった高齢者を、完治しなくても可能な限り早くに日常生活を送れるようにして、住み慣れた場所で暮らせるよう医療・介護・福祉サービスで総合的にサポートする概念と言えます。

そこで、当院では「いつまでも健やかに…私たちの願いです」の基本理念のもと、健康経営も推進してきました。院内の医療だけでなく、在宅サービスも充実させ、さらに「予防・未病」の考えのもと「ヒューマンライフライン(多世代が支え合う仕組みづくり)」を通じ、地域の人々が病気にならないための活動にも取り組んでいます。

――在宅サービスとは具体的にどのようなものですか。

髙田理事長: 障害の部位、度合いは人それぞれです。そこで、医療・介護チームが密に連携をとり、その人だけのプランを柔軟に設計しています。まずは院内で早期に帰宅できるよう治療し、そして退院されたあとは再入院しないよう在宅でも細かくサポートする。そうして、患者さまのその先の人生にも寄り添うのが、私たちの役目だと考えます。

――地域に向けた活動にはどのようなものがありますか。

髙田理事長: 当院のスタッフが地域にでて、健康経営に関する講座を開設したり、医療・介護・保険制度について説明したりしています。とくに制度関係は事前に手続きをして、認定を受けておかないと適切なサービスを受けられません。地域の方々にこの様な知識をつけていただければ、いざ病気や怪我で入院されたときには私たちが提案する治療やそのための制度にご納得いただきやすく、そして手続きをスムーズにできるでしょう。

地域の活性にも繋がる、新たな街づくり

――キラメキテラスとその周辺の環境はいかがですか。

髙田理事長: まず、「キラメキテラス」のあるエリアは鹿児島市のど真ん中にあり、JR九州「鹿児島中央」駅まで歩いていけます。このような好立地に住まいと商業、そして医療も含めた新たな街づくりができるのは、参加するメンバーのチーム力です。だからこそ、私たちだけの話ではなくて、地域の活性化にもつながるような取り組みもできればと考えています。

――地域にもいい相乗効果を期待されているわけですね。

髙田理事長: 当院と「いまきいれ総合病院」の医療チームは開院しましたが、施設全体のグランドオープンは2023年(令和5年)の予定です。今後はスポーツジムやスーパーマーケット、飲食店、ホテル、マンションなど多様な施設が加われば、ここは鹿児島で一二を争うほど便利で安全な場所になるでしょう。そのために今、私たちは企業や自治体とも連携しながら街づくりに邁進していますので、ぜひ地域の方々にはワクワクしながら見守ってもらえればと思います。

キラメキテラスへルスケアホスピタル・理事長 髙田 昌実 先生
キラメキテラスへルスケアホスピタル・理事長 髙田 昌実 先生

玉昌会 キラメキテラスへルスケアホスピタル

理事長 髙田 昌実 さん
所在地:鹿児島県鹿児島市高麗町43番30号
電話番号:099-250-5600
URL:https://www.kthc-hp.com/
※この情報は2021(令和3)年12月時点のものです。

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